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「苦手なもの」


葉乃様



 「うっ・・きゃ~っ(涙)」

屯所内に叫び声が響く。女子の悲鳴のような、

およそ新撰組隊士のものとは思いもつかないような叫び声が、聞こえてくる。

しかも、それがよりによってそんな声とは無縁そうな副長室の方角から聞こえてくる。



「なっ何事っ?」

悲鳴に最初に気づいたのは、一番隊隊士、相田と山口だった。

悲鳴の声の主に、なんとなく覚えがある。



「相田・・今の声・・。」

「あぁ・・山口・・あの声・・。」

「「神谷の声だ!」」



相田と山口は声のする方角に慌てて駆け出す。

一番隊は今日は非番、組長の沖田は昨日から3日間の出張に出かけている。

「なにかあったら、神谷は俺達が守らなきゃ!」そう思っていた矢先のことであった。



「どうしたんだ、神谷~。」

「今いくぞ~。」



2人は副長室の前までたどり着く。

急ぎ走って、着いたものの、目の前の戸はあの鬼副長の部屋につながっているのだ。

開けていいものか、躊躇するうちに中の声が聞こえる。



「ふっ・・副長っ・・お願いしますっ。それだけはいやっ・・。」

「何言ってやがんだっ・・お前は副長つきの小姓になったんだぞ。」

「でっでもっ・・。」

「今までは、総司が助けてくれたかも知れんがこれからはそうはいかんっ。」

「でもっ・・やなものはやなんですっ・・後生ですからっ。いやぁっ。」

「はやくこっちへ来いっ。」

「きゃ~っ。」



「そういえば、神谷は今日付けで副長の小姓に移動になったんだ。」相田と

山口は思い至る。でも、この会話じゃまるで・・・。

「神谷の操があぶないっ」瞬時にそこまで考えが行き着いてしまった彼らは慌てて

副長室の戸に手をかける。

「副長っ失礼しますっ!!」

「神谷っだいじょぶかっ!」



『ガラッ』



戸を開けた瞬間、相田と山口の足元に黒く小さいものが、すごい勢いで向かってくる。

「おわっ、なんだっ」

「おぉっ。」



『ぱしんっ』



相田が懐紙の束でそれを叩く。



「これって・・油虫・・か・・?」



「わぁん、相田さんありがとうございますっ。」

セイは泣きながら相田に近寄る。

「かっ神谷っ?」

「もしかして、今の話って・・?」

「ちっ・・邪魔が入ったか。神谷、命拾いしたな。」

「土方副長・・?」

「どういうことですか?」

相田と山口が口々に尋ねる。

「どうもこうもねぇよ・・。今日から俺につくことになった小姓様がよ、

なんと油虫が苦手で、退治も出来ねぇんだとよ。」

土方はため息をつきながら言う。

「はぁ・・。」

「もしかしてそれで、退治させようとして言い争ってたんですか・・?」

((信じらんねぇ・・・何やってんだこの2人・・))



「相田さん、山口さんっ助かりました!ありがとうございますっ。」

「「いや、なんてことないよ。これくらい・・。」」

「まったく信じられませんよね。今日から私の直属の上司になられた副長様が、

こんな大人気ないことするなんてっ。」

「なにぃっ、神谷っそいつぁ誰のことを言ってんだ?」

「さぁ、誰でしょうねっ。副長が一番よくご存知の方ですよっ。」

「なんだとぉっ!」



((・・・おいおい・・))



相田と山口を尻目に、セイと土方は大人気ない口論を続ける。

しかし、意外なことに、2人のそれは、上司と部下のそれというより、

犬も食わないものに近かった。

2人はしばらくそれを見守っていたが、やがてあきれたように深いため息を

つき、副長室を後にした。



「なぁ・・相田・・。」

「山口・・言うな・・。」

「いや・・でもよ・・。」

「なんだよ・・。」

「実は沖田先生よりさ・・。」

「その先は言うな・・。」

「あぁ・・悪かった・・。そうだよな・・。」



((土方副長の方が、手ごわい相手かもしれない・・))





・・数日後、今度はナメクジ退治において、全く逆の立場で

セイと土方が口論することになろうとは今は誰も知らない・・。



「信じられないっ、これくらい自分でやってくださいよっ。」

「おれぁ、おかまとナメクジだけは許せねぇんだよっ。」

「だったら、ご自分で処罰なさってくださいよっ。」

「うるせぇっ、つべこべいわずに早くしろっ。」

「はいはぃ。泣く子も黙る新撰組の土方副長が、

ナメクジ退治もお出来にならないとは・・隊士に示しがつきませんよ?」

セイはにっこりと笑う。

「うるせぇっ・・また油虫退治させるぞっ?」

「そんなこというなら、これを片付けてからにしてくださいっ。」

「ぐっ・・わかった、わかったよっ。いいからそいつを片付けてくれっ。」



相田と山口は、その声を聞きながらまた深いため息をつくのであった・・。





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梅桜様、9万打おめでとうございます♪

梅桜さんの作品を読んで「私も書いてみたい!」と思うようになって、

これでちょうど5作目です。まだまだ大人な歳セイは上手く書けませんが、

こんな初々しい歳セイもお楽しみいただければ幸いです。

お口汚しになるかもしれませんが、心ばかりのお祝いです♪

どうぞお納めくださいv

これからも、素敵なお料理をどんどんお願いいたしますv



葉乃





葉乃さんから9万打のお祝いにと頂きましたお品で御座いますv

読み進めているうちに、 「にゃにゃ、これはもしや裏風味vv」と思ったのも束の間、 事の真相を知り、あまりの自分の妄想ぶりに顔をあからめた女将です(^^ゞ

油虫が苦手なセイちゃんは可愛らしいですが、なめくじが苦手な歳は少し情けないですよね(笑)

さてさて、相田さんと山口さんはこのことを総司に報告したのでしょうか。

相手が歳だと何だか後で何かありそうで各々の胸に秘めているのでしょうか(にやにや)

葉乃さん、この度はとっても楽しいほんわかなお品を送って下さいまして、どうも有り難うございましたvv



駄文では御座いますが、私のがきっかけで書きたいというお気持ちを抱かれたのでしたら、本当に嬉しいです(*^^)

何だか、照れてしまいます。

私も思い返せば、二次創作小説を書くきっかけは素敵作品を拝見して、「およばずながら私も書きたいなぁ。うずうず」と いう気持ちから始まり、気付いたらサイトを持っていました。

他の方の作品は自分にはない視点で書かれていたり、自分には出せない雰囲気だったり、もう本当に他の方のお品を拝見するのが大好きです。

もちろん、葉乃さんのもサイトを開かれてから、沢山のお品を拝見することができて、ほくほくしています。

何だかこういうふうに作品を書かれる方が増えていくのはとっても嬉しいなぁと思いました。

葉乃さんこそ、これからもどんどん素敵なお品を拝見させてくださいねvv

この度はどうも有り難うございましたv