――――東風吹かば にほひ をこせよ梅の花 主なしとて 春を忘るな




「梅」

春様




夕餉も済んだ頃、新撰組副長・土方歳三に呼ばれて、新撰組隊士の神谷は 副長室に参じていた。着物の裾が破れたといい、当たり前のように差し出す 着物を、神谷は不機嫌な顔丸だしで繕っていた。



「神谷。なぜそうまでして武士になりたがる?女として嫁に行ったほうが、 幸せだろう?俺の知る女は皆そうだった。」

「私をそこらの女性と一緒になさるのですか?それでは私の代わりなんて、 いくらでもおりますね?」



可愛くない―――いや、そこが可愛いのか、と土方は思う。

どうしてもっと女らしくならないのか。時々そんなそぶりを見せてはいたが 最近トンと見かけなくなった。ますます武士らしさに磨きがかかったのは、 はたして喜ぶべきことか、悲しむべきことか。



「…副長。貴方の考えていることが目に見えるようですよ。」



盛大な溜息をついて神谷清三郎――――本名を富永セイという女だが―――が、 呆れかえった様な眼で目の前にいる男を睨みつける。



「わかるか。…ときに神谷。お前、梅の香をつけているだろう。」

「香?ああ、だから変なことを言い出したんですね?これは、たまたまですが。」



いつもの彼女らしくない言い草に、少しだけ土方は眉間に皺を寄せる。

いつものことだから気にはつかないだろうが、やはり少し機嫌を損ねた。

たまたまで着く匂い?そんなものがあるか?

いや、あるのだろう。自分が島原から帰ってくると必ず神谷があまり近くによるな、 と言い放つのがその証拠だろう。



「お前はいつから女遊びが盛んになったんだ?」



そう、小さく拗ねたような声で問うと、神谷はなにも言わず、ただ微笑んだ。



母のように、幼子のように、艶を含んだ女のように――――

まるで、その香りのごとく。梅のように。

「…お前は心でさえも武士にはならねぇなぁ?いや、させねぇ、か。」



―――――忘れるな。お前の中に眠る美しい心を。

例えお前自身がそれを捨てようとしても、必ず俺のために忘れないでくれ。

「…もうすぐ春だな。…ここはもう春だが。」

「…なにをバカなことを。」

そういって笑うお前は、優しい春の香りがした。







春さんにお年始の御挨拶代わりに駄文を押し付けましたら、御丁寧に二品もお返しとして頂いてしまいましたvv

「『梅桜亭』にちなんで、『梅』と『桜』をテーマにしました」ということで、このお品はそれの『梅』の方になります。

もう本当に嬉しいです。だって、私の好きなお花の梅と桜にちなんだお話を書いてくださったなんて・・・・・(感涙)

「梅桜亭」と名づけたのは単に、私のHNが「梅桜」だったからという愛想もひねりもないネーミングですが、では、なぜHNが 「梅桜」かと申しますと、単に大好きなお花を二つ並べただけというこれまた面白みもセンスもないネーミングでございます(^^ゞ

しかし、大好きなお花をテーマにこうして春さんが書いて下さって、受験生でお忙しい中、本当にどうも有り難う御座いました。

梅の香をするセイちゃんに気がつく歳。

ここが私的には一番の悦ポイントでございました。

女を捨て武士として生きることを望んだセイちゃん。

だが、それでも「女」そのものは切っても切れぬわけで・・・・・・・。

歳としてはどちらのセイちゃんも愛しいけれど、男としては「女子」の方に惹かれてしまうわけで・・・・・。

くぅ〜・・・・・悦!でございます。

春さん、この度はお忙しい中、どうも有り難う御座いましたvv

さて、もう一つのテーマ『桜』の方も是非是非続けて御覧になって下さいませ・・・・・・・