小さくて、儚くて、すぐに消えてしまう想いは、いらない。
ただ美しいだけの、想いもいらない。
ただ欲しいのは、確かに存在する『刻―トキ―』――――
「雪、 桜」
春様
「あっ!副長!初雪です!通りで寒いと思った。」
「神谷。ぐずぐずするな。寒いなら早く用を済ませて帰るぞ。」
少しは感動してもいいじゃない。二人で見るんですよ、初雪。
など、自分には言えるはずもなく、ただ渋々と歩いていく。
男と思われ、それを望む神谷清三郎。
しかし、その心の片隅で、富永セイとして愛されたいと願う心。
どっちつかずの想いを、どうすればいいのか。
――――ただ、願うのは、この時が続けばいいと。
それも溜息とともに空気に溶けていく。
地面に落ち、吸収されていく雪の結晶が、ひどく儚かった。
「…帰りましょう。早く。」
何故かいたたまれない気持ちになって、いつの間にか副長よりも急いで
歩いていた。
早く、早く。
「どうした神谷。雪が嬉しいんじゃなかったのか?」
「嬉しくない!…嬉しくないです。早く帰りましょう。」
貴方は気づいてしまっただろうか。泣きそうな顔に。
「…分からない奴だな。さっきまではあんなに喜んでいたのにな。」
「…雪は、嫌いです。すぐに消えてしまうもの。」
そんな雪だから、貴方とは見たくなかった。
すぐに消えてしまう、なんて、縁起でもない。
消えるのは貴方なのか、この想いなのか、定かではないけれど。
「…雪が、桜なら良かったのに…」
「そうだな…。桜が咲いたら、ここも随分と雰囲気が変わるだろう。」
「…見に、来たいですね。副長。」
「…そうだな。煩いのはごめんだが。」
儚く小さな雪は、まるで私の心のよう
美しい桜は、まるで私の想いのよう。
―――――願いましょう。雪に、 桜に。
貴方の御傍に、少しでも長くいれますように。
私の想いは、綺麗でも儚くもない。
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