ある日 彼が呟いた
「うわぁ。息が白いですよ」
「ずいぶん寒くなってきましたねー」
紅葉した葉も落ちてしまい、
季節はゆっくりと寒い冬へと移行していた
闇夜に浮かび上がる白い吐息に寒さを感じ、神谷は身を震わせる
「さむーい!沖田先生、早く中に入りましょう」
「ええ。そうですね。部屋に入って、温かいお茶を飲みましょうv」
「あ。良いですね、それ!」
「美味しいお菓子もあるんですよ」
「やったぁv」
二人で仲良く、
廊下を歩いていると、向かい側からやってきた土方と遭遇した
彼は総司を認識したように片眉を上げ、何でこんな所に居るのかと、一瞬訝しげな顔をする
しかしすぐに思い当たる節があったのだろう、その表情は消えた
「巡察が終わったのか?」
「ええ。今日は何もありませんでしたよ」
「ご苦労さん」
労うように総司の肩を叩き、再び歩き出そうとした土方に総司は笑顔を向ける
「今から神谷さんとお茶を飲むんですけど、土方さんも一緒に如何ですか?」
「いや。俺はまだ仕事があるから」
「相変わらず忙しいですねー」
「あ。では、後で部屋にお茶を持ってきましょうか?」
「・・・・・・なんだ。神谷も居たのか」
総司の横から言った神谷が言った
目を向け、そこで初めて彼は彼女が居ることに気が付いた
「居ましたよ。・・・・・って、何ですか・・・・・・・・・?」
何を思ったのか彼は、じーっと神谷を見つめているのだ
困惑し、居心地悪そうな様子の彼女に一言
「別に。気にするな」
「・・・・・・・・・・・」
答えにも何もなっていない言葉に、神谷は思いっきり眉根をしかめた
何がしたいんですかとはっきり問いたいが、それをさせてもらえないようなそんな
雰囲気に戸惑う
見つめられてばかりでは気分が悪いので、しょうがなく神谷も彼を見る
身長差の所為で、彼の顔を見るには神谷は上を向かなくてはならなかったが
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
自分を上目使いに見つめる、彼女をしばし彼は無言で見つめる
無言の空気にとうとう堪えられなくなった神谷が、口を開こうとした、まさにそのとき
「神谷、お前いつまで経ってもちっちぇな」
ボソッと言った一言に神谷は凍りついた
「・・・・・・・・・・・・・・・・・な・・・・・・・っ!!!!」
「ああ。神谷さん、落ち着いて」
息をするのも忘れている、神谷に総司は慌てる
大きく息をすって、吐いて
それを数回繰り返すと、ほんの、ほんの少しだけだが落ち着いたような気になった
一息ついたところで、神谷は土方を思いっきり睨み付ける
「いきなり、何なんですか・・・・・・・・・・っ!!!!」
「声、大きいですよ、神谷さん・・・・・」
「だって、あんな失礼なこと言われたんですよ」
「失礼なことって、俺は思ったままを言っただけだぜ」
「それが失礼なことなんですっ!」
びしっと土方に向かって指を突きつけ、
「私は成長しているんです。今に副長を超しますから!!」
言い放った
しかし、
それすらも上目使いになっているため、威力が半減してしまっている
「・・・・・・・・・・・それは流石に無理なんじゃ・・・・・・」
思わず突っ込んだ総司に、ギロリと視線を向ける
「沖田先生、何かおっしゃいましたか?」
「・・・・・・・いえ、なにも・・・・・・」
怒りの矛先が自分に向いては堪らないと思ったのか
「もう、土方さん、何でそんなこと言ったんですか」
「だから、俺は思ったままを」
「ああ。もう。余計なことを・・・・・・・・」
溜息一つついて、
「神谷さん、ほら部屋に行きましょう」
「・・・・・・・・・・・・・今日のことは絶対忘れませんからね、副長!」
半ば総司に引きずられるようにして、連れ去られていく神谷に
土方は一言、呟くように言った
「お前が、俺を上目使いに見つめる目は嫌いじゃねぇけどな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」