「・・・・あ・・・・」
町へのお使いの帰り、艶やかな着物の女性と楽しげに話している
副長の姿が目に入った
端整な顔立ちだからだろうか、
それとも、彼の姿を無意識に探してしまっている所為だろうか
何処に居ても目についてしまう
女性と話している彼は、
副長の顔ではなく、土方歳三としての顔とでも言うのだろうか
ゆったりと楽しげな表情は屯所では余り見ない
何だか胸の奥がむかむかする感じがした
早く立ち去ろうと思った矢先、当の土方と目があってしまった
微かに驚いた表情をした後、土方は女性と二言三言言葉を交わし
こちらにやって来た
見ていたことを悟られたくなくて
でも何て言ったら良いのかと言葉を捜しているうちに
「お使いか?神谷」
彼の方から話しかけてきた
「え、ええ。もう終わりましたけれど」
「じゃ、一緒に帰るか」
「・・・・・・・はい」
自分が女性と土方を見ていた事をわかっているだろうくせに
その事に触れないことが、何だかセイの表情を少し曇らせる
別に、言い訳が欲しいわけじゃない
別に、言い訳が必要な仲でもないし
だけど、それでもいつも通りの彼の態度が、胸にちくりと棘を刺す
「・・・・・・あの女(ひと)」
ぽつりと独り言のように呟いた言葉に、土方が反応した
「何だ。気になるのか?」
「なっ。そんなんじゃないですよ!」
「ふーん」
思わず切り替えしたセイの言葉に、にやにやとしたいかにも楽しんでいますという笑みを浮かべる土方
そんな彼を見てると、絶対に納得していないと思えて
「相変わらず、副長はもてるんですねと
思いまして」
精一杯の嫌味を込めて言ったはずなのに
「ま。俺ぐらいの良い男だったら、仕方ねぇよ」
自慢げに返されてしまった
「・・・・・・・」
何処までわかっているのか
何処までわかっていないのか
知ろうと探りを入れるけれど、それはかわされてしまう
捕まえようとしたら、いつもするりと逃げられる
何もかもわかっていて、からかわれるのも癪だけれど
逆に何もわかっていなくても癪な気がする
なんて、ぐるぐると考えていたら
「どうした、神谷。ぼけっとして。俺に見とれても何も出ないぜ?」
にやりと人を小バカにした笑み
それは、全てを見透かしているようで
「なんでもないです!」
力の限り否定しても、やっぱり笑われるだけで
笑われて悔しいはずなのに、その笑顔に少しばかり胸をときめかせてしまう
自分も居るわけで
何処まで行っても、負けっぱなしな気がしてならない
だから絶対口にしてなんかやらない
好きだなんて
貴方がその意地に気づくのは いつになるんだろう