「土方さん、京はやはりすごいですね。何もかもが江戸とことなる。まるでお天道様までが京風ではんなりと照らしているような気がします」
昨日京入りを果たした土方達は京見物にと繰り出したのだが、隣を歩く総司は興奮がとまらないのか先程から土方の袖をひっぱっては、話しかけている。
そんな総司の態度に顔をしかめつつも、土方も生まれて初めての京で浮き足が立っているのは否めない。
女の頭の結い方から言葉から、店先に並んでいるものから・・・・・・。
どこか何かしら慣れ親しんだ江戸と異なるのである。
「あっ、土方さん!ほら、あそこお団子屋を発見しました!一休憩に行きましょうよ。ほらほら、あそこです」
「あん?そんなところに俺は行きたくねぇ。てめぇ。ひとりで行って来い」
「ふんだ!土方さんの意地悪。きっと近藤先生なら一緒について来てくれるのに・・・・・・意地悪」
「そりゃぁ、悪かったな。ほれ行くなら
とっとと行って来い。俺はこの辺で飯を食ってくる」
そういって、総司と反対方向へ土方は足を向けた。
綺麗に区画通りに並べられた街は、
鉄砲の玉があたらぬようにと入り乱れた
町並みの江戸とは異なり、じつにすっきりしているものだった。
歩く事には行商で慣れている。
しばし町を歩いていると、
一人の少女とぶつかった。
女の方が軽量の為、よろける。
慌てて土方は支えた。
「すっすみません」
土方の腰にさしている物をみて武士にぶつかってしまったのだと女は慌てて、頭を下げた。
「いや、こちらこそ・・・・・・・悪ぃ」
困ったように頭に手をやりながら
話す歳に少女は目を見開いた。
「失礼ながら、貴方様は京のお方ではありませんね」
土方の頭をかく手が止まる。
そういえば、女の言葉にも京訛りはない。
「ああ。そしてあんたも」
女はにこりと笑う。
「道に迷われましたか?みたところ、つい最近京へおつきになられたようにお見受けいたします」
土方はぼろぼろの衣をこのときになって漸く恥じた。
「いや、物見遊山中だ」
照れを隠すように頭を掻く土方に、
「ぼろは着てても心は錦と申します」
女はそっと笑むと頭を下げてその場を去っていった。
土方の胸に女の髪飾りのゆれる様が
いつまでも残っていた。
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