質問〜其の八〜




質問:

副長とセイちゃんに質問です!

お二人は人生を全うするために何か座右の銘のようなものはありますか?

もしもっていらっしゃるのなら是非教えてください。お願いします。





質問者:ぬえさん



回答:





「人間五十年化天のうちをくらぶれば夢幻のごとくなり」

「人の一生は重き荷を負うて、遠き路を行くが如し。不自由を常と思えば不足なし。おのれを責めて人を責むるな」

「浮世夢の如し」

「若き中には随分不仕合わせと成るがよし。不仕合わせの時草臥たる者は益に立たざる也」・・・・・・」



「・・・・・・なんだなんだ。急に、真面目な顔して。信長に家康公に李白に葉隠の一節か。どうしたんだよ」



「あっ、いえ。今日の質問がですね。座右の銘は何ですかというものでしたので、思い浮かぶ名言・名句・格言などを口にしていたのです」



「座右の銘なんぞ、これ一言に決まっているじゃねぇか」



「おおう、何です?」



「売られた喧嘩は買う。やられたらやりかえせ。勝つまでやりかえせ。」



「・・・・・・。

・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・。」



「・・・なんだよ。その顔は」



「いいえ。実に副長らしいお言葉だと思っただけでございます」



「その割には呆けているようにみえるのだがこれは俺の気のせいだろうか」



「気のせいでございましょう(深い溜息)」



「だからなんだよその顔は。なら、お前のはどうなんだよ?さぞかし御立派な『座右の銘』なんだろうな」



「立派かどうかといわれると困りますが、五歳の頃から思っていることはあります」



「五歳?そんなガキの頃からか?」



「・・・・・・(ムッ)そんなふうにおっしゃられるのなら、申しません」



「悪かった。からかって悪かった。なっ、いいじゃねぇか教えろよ」



「つーん」



「もう笑わねぇからよ。なっ?」



「その笑いをかみころした顔がとても気になるのですが」



「気にするな。地顔だ」



「そうでしょうか」



「もううるせぇな。俺も教えたんだから、教えろよ。五歳からいままでずっと思っていることなんだろ。たとえ他人に笑われようが、

何か一つのことを胸に抱いているというのはいいじゃねぇか。男はかくあるべきだぜ」



「・・・・・・男はかくあるべき・・・・・」



「おう。(しめしめ、のってきたぞ。こいつは「武士」とか「男」という言葉に弱ぇんだよな)」



「あの。あのですね。絶対笑わないって約束して下さいますか?(頬を染めつつ、上目遣いに前髪をしゃらりとなびかせる)」



「(どっきゅん@斉藤)」



「あの、あのですね。その私小さい時から泣き虫でして。それで、その理由を考えたんです。今泣くのは大きくなったら泣かずに公方様のお役に立つ為なんだって。でも、いくら大きくなっても涙は出てきちゃって。いつになったら泣かずにお役に立てるのかしらと思っているんです(だんだん語尾が小さくなる)」



「はは、お前らしいな」



「今でも泣きそうになるとこの言葉を心の中で繰り返して念じて、泣くな泣くなとうんとおなかに力を入れるのですが、未だに泣かずにいられたことがなくって・・・・・。副長は、泣きそうになったらどうされるのですか?」



「俺は泣かない。否、泣けないと言った方が正しいな」



「沖田先生も似たようなことをいつかおっしゃっていました」



「あいつも随分と泣き虫だったくせにいっちょまえになったということか」



「どうせ、私は一人前じゃないですよ」



「まぁ、そうむくれるな。俺がいちいち物事に感情を動かされていては隊士達が動揺するし、副長職は成り立たん。心を持っている人間ではあるが、その実何事にも心を動かされてはいけないんだ。それは武士にも言えることだ。やれ哀しいやれ腹立たしいやれ愛しいやれ嬉しい。その都度その都度心動かされては真の志を果たすことはできねぇと思ってる。女が泣くのは様になるし、涙は女の武器だけどな、男は

歯を見せて笑っちゃいけねぇ。涙も見せちゃいけねぇ。表に出してはいけねぇんだ」



「それでは、外に出せぬ気持ちで心が一杯になってしまいます」



「あぁ。だがそれで男の価値が分かるというもんだ。腹に一物やニ物抱えてこそ男さ」



「男の人は強うございますね」



「そう思うだろ?だがな、実際は弱ぇ。女の方が強いもんだ。弱ぇから女に溺れるし酒に溺れることもある。己を律する難しさだな」



「でも、私は存じている副長はただの鬼副長だけではなく『土方歳三』という一人の男の一面も存じているような気がするのですが」



「そうかい。嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか」



「?そんなことが嬉しいのですか?」



「男は弱みを見せねぇ。見せるとしたら・・・・・・の前だけさ」



「えっ、すみませんお声が小さくて聞き取れませんでした。何の前だけなのですか?」



「さぁな。さて、俺はひとっぷろ浴びてくるか。いつものように冷まし湯用意しておいてくれ」



「はっ、はい」



(歳、鼻唄交じりに副長室を去る)



「・・・・・・何か、副長嬉しそう。それにしても何の前なんだろう。う〜む」







というわけで、いつのまにか男とはどうあるべきかという講義になってしまいました。

歳がどうして嬉しかったのか、その気持ちが分かるようになった時セイちゃんはまた一つ成長するのかもしれませんね。


ぬえさん、この度は参加して下さいまして、どうも有り難う御座いました<(_ _)>

(初出:2004年11月17日)