「沖田先生ってとっても野暮天なの」
あいつの口から何度もこの言葉を聴いた。
総司に悪気はないのだが、剣一筋でやってきた男だから、どうしても男女の事柄には疎い。
京に上る前も酒の席で吉原の話題を出すと、一人頬を染めて、もじもじとしていた。
でも、でもだ。
俺は思う。
お前も相当な野暮天だぞと。
お前の正体を知り、小姓にしたのは
つい先日。
そして、俺がお前にいつも目を向けていることに気がついたのもつい先日だ。
「神谷、今日は天気がいいな」
そう問いかけると、お前ははいと障子を開けた。朝の光に吸い込まれるお前が眩しい。
「どこか出かけるか?」
仕事も珍しくないに等しいし、こいつと外に出かけてみるのもいいと思った。
「はい。何か御仕事ですか?」
「いや、私用だ。たまにはゆっくりする時間をもってもばち当たるめぇ。仕方がないから、お前も連れて行ってやる。
どこへ行きたい?」
突然の展開にお前はきょとんとしているが、可愛らしく首をかしげて口を開いた。
「では、ずっと副長と一緒に行きたいなぁと思っていたところに」
俯きながら頬をそめていう姿が妙に心を騒がせる。
「仕方がねぇから。つきあってやる。
どこだ?」
どこだろうか。
紅葉が美しい場所だろうか?
どこか美味な定食屋だろうか?
それとも何か小物を買うのだろうか?
色々考えている俺にお前はこういった。
「お菓子屋さんです」
「・・・・・・あん?」
「だって、副長。私が見立てた御菓子どれも美味しくなさそうに食べるんだもの。お茶に合うかなっていつもあれこれ選んでいるのに・・・・・・。だから、
今日は副長のお口に合う御菓子を見つけて、今度から副長においしそうに食べてもらおうかなぁって」
「・・・・・・いや、だからな。どうせ二人で出かけるんだから、例えば紅葉が美しい所とか、どこかのどかなところとか、小物屋とかだなぁ・・・・・」
「きっとそんな綺麗な場所へ行ったら、副長は豊宝宗匠になってしまうし、
小物屋へ行っても武士の私には必要なものはないですよ。それよりもお菓子です!お菓子!」
俺はふぅと思い溜息をついた。
神谷に大人の逢瀬を求めてもまだ早かったようだ・・・・・・。
「副長って、どんなお菓子がお好きなんですか?」
俺の腕をひっぱり早く早くとせかす神谷にそっとつぶやいた。
・・・・・・お前も十二分に野暮だぞ・・・・・。
光源氏は幼子を手元において自分の好みの女に仕上げた。
今からでも遅くない。
俺も光源氏にならおうか・・・・・。
神谷の幼さを醸し出す笑顔を見ながらふと思った。
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