「・・・・・・でしょ?」
「・・・・・ですよね」
男所帯の新選組屯所。
その中で一際楽しそうな会話が聞こえてくる。
背の高い青年と小柄な青年。
もっとも、後者はまだ少年のあどけなさを残していた。
稽古着を着たまま井戸場で互いに乾いた喉を潤している。
「絶対、神谷さんも気に入ると思うんですよ、あそこの羊羹」
「そうですか?でも、先生のお気に入りのお菓子は決まって甘すぎるくらいだもんなぁ」
「あそこの羊羹はくどくない甘さなんですよ、きっと神谷さんも気に入りますって」
「本当でしょうか?」
「だから、行きましょうよ。今度の非番の日」
「・・・・・・別にいいですけど・・・・・・」
「やったぁ、!こういうことって、神谷さん以外の方にはなかなか頼めないんですよね」
青年は両手を上げて、万歳の格好をするが、表情は少年の方が嬉しそうだった。
「じゃぁ、今度の非番の日、土方さんには内緒で行きましょうね」
「?別に、副長に内緒にしなくても・・・・・・」
セイが首をかしげると、総司は人差し指をびしっと立てる。
「だって、この前も、その前も、ずっと前も、神谷さんとこうして約束をした日に限って、神谷さん土方さんから用事を押し付けられていませんか?」
確かに、言われてみればそうかもしれない。
だが・・・・・・
「たまたまではないですか?副長もお忙しい方ですし・・・・・・」
「そうでしょうか。でも、土方さんには内緒ですよ」
指きりげんまんを求められて、されるがままになっていたセイは
「はぁ・・・・・・」と戸惑いながらも返事を返した。
☆
一方、こちらすべてを聞いてしまった・・・・・・否、聞くべきして聞いた本人、土方。
井戸端で楽しげに会話する二人を見ながら、「ほう・・・・・・」と目を細める。
「成程、次の一番隊の非番の日に羊羹を食いにねぇ・・・・・・」
丁度、今から三日後の日である。
「よし、何か仕事をまた神谷に押し付けるか」
誰ともなしにぽつりともらすと土方は今来た道を去っていった。
☆
三日後、二人が楽しみにしていた羊羹は当然のことながら、食べにいけなくなってしまった。
何でも、土方が体調が悪いとかで寝込んでしまい、その看病にセイがするよう近藤からいわれたからだ。
近藤から頼まれては、総司もセイも断れない。
近藤はセイが医術に通じているからということで、土方の看病をするよう命じたのだが、一方土方の方は、布団の中で己の思惑通りに言った事にほくそ笑んでいた。
勿論、体調など、どこも悪くない。
もともと色が白い方ではあるので、頭がくらくらすると訴えればすぐさまセイが健気にも「貧血かも知れません。横になって下さい。」とかいがいしく世話をしてくれる。
ふと、視線を感じた方をみやれば、総司が何ともいえぬ表情でこちらを見ていた。
土方はセイには気付かれぬよう、視線だけで「ニヤリ」と総司に返した。
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