胸にある火傷の傷は、あの日を境に女を捨てた証拠。
どんなにお転婆だと言われても、体に傷はつけないようにしていた。
幼い時から兄上がいつも怒るから。
「セイ、女子が体に傷をつけては嫁の貰い手がなくなるぞ」
「兄上、兄上もお嫁さんをもらうとき、綺麗なお嫁さんがいいの?」
そう問いかけると照れ隠しに頭を掻いた兄上。
その頃、もうとっくに里乃さんと出会っているとはつゆと知らなかった。
私は、もう女子ではない。
女子ではないのだ。
なのに、その封印を解く人が一人。
誰にも見せたくない醜き傷を丹念に舐め吸ってくれる人が一人。
その人からは、ほんのり優しい匂いがする。
私よりずっとずっと綺麗な女の人を幾人もの抱いてきたくせに。
私よりずっとずっと女らしい人を幾人もの夜を共にしたくせに。
最後には、必ずこういうの。
「女のお前が髪を切るぐらいの覚悟をさせたこの傷が俺には愛しい」
でも、傷を舐められる度に、新たな傷を負う。
笑顔が眩しいあの人に黙って大人へなってゆくことに。
いつまでも子ども扱いするあの人に黙って知らぬ女へなってゆくことに。
照れ屋なあの人に抱かれながら違う男を浮かべていることに。
本当は優しいあの人に抱かれながら心は空ろなことに。
アア、ムネノキズハ、 シヌマデナオラナイ・・・・・・。
兄上、人に恋するということは、人を愛するということは、傷を負うほどこんななにも苦しいものなのですね・・・・・・
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