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清三郎日記ー1-
9月15日 鬼天気(晴れ)
今日は仲秋の名月が見られる日です。
隊士の皆もお庭に出て、お酒を飲んだり踊ったりしながらお月見を楽しんでいます。
いつもなら五月蝿くすると怒る副長も、今日は見て見ぬふりをするようです。
ささやかではありますが、おだんごとそしてお酒を副長室に用意しました。
部屋の中から見えるお月様はまんまるで、とてもきれいです。
副長はちびりちびりと盃を傾けています。
おだんごもすすめましたが、「甘いものは好きではない」とお酒と肴ばかり口にしています。
夜空に浮かぶ月と盃に映る月を見比べて、副長は句を練っているようでした。
発句をするとき、副長は「秋空の・・・・・・いや、秋の風・・・・・・月・・・・」と無意識のうちにでしょうか、ぼそぼそとつぶやくのですぐ分かってしまうのですが、これは小姓である私だけの秘密です。
副長がこちらを気にしているようでしたので、何も知らぬふりをして室内に広がっている書類を片付けます。
しばらくすると背中から、かさかさと筆を走らせる音が聞こえきました。
良い句が出来たのでしょうか。
それから程よいところで片づけを切り上げ、副長の隣に座りました。
「私も今日はよろしいですか?」
徳利を傾け、お酒を飲みました。
月を見ながら、お酒を嗜むなんて何だかちょっと大人になった気持ちがしました。
驚いたことに二度目は副長が注いでくれました。
「童はこっちじゃねぇのか」
とおだんごの方をあごでしゃくります。
「童じゃありません。でも、せっかく作ったのに食べてくれる人がいないので食べます」
と数個思い切り口に入れました。
副長好みの甘みを抑えたお酒にも合うような味に仕上げたつもりなんだけれどな・・・・・・。
自分で作って自分で食べても、美味しくありません。
「やっぱり、お前はだんごじゃねぇか」
カッカッカッとからかうので、頭にきて徳利全部飲み干しました。
「どうです!下戸の貴方より私はお酒が飲めるのですよ」
そう言ったつもりだったのですが、目がぐるぐるしてきて上手く言えません。
・・・・・・あれ?
次に目を開けた時には、お月様は消えて空が明るくなっていました。
ガンガンする頭を抑えて起き上がると副長は隣で寝ていました。
羽織をかけてくれていました。
副長の隣には、空になった徳利と空になったおだんごのおさらが転がっていました。
こちらは以前、WEB拍手にて掲載していたものです。
私の年齢よりセイちゃんの方が年下の為か、何だか舌ったらずな日記です(^^ゞ
ちなみに朝セイちゃんが見た歳の口元にはおだんごの粉がついていたそうな。
初出:2004年9月18日