4月10日 鬼天気(晴れ)
今日は、副長のお供で黒谷へ行きました。
・・・・・・お供というと聞こえはいいけれど、要は荷物持ちです。
風呂敷の中に何が入っているかは知りませんが、重いことは確かです。
いつもの荷よりも重いので中身が気になり、そして、よからぬ思いがふとよぎりました。
副長に気付かれぬよう、そっと風呂敷に包まれている箱を振ると、ゴトゴトと音がしました。
そういうことはないとは思いながらも、金子の音がしないで良かったです。
副長の小姓付きになってから、こうして黒谷や他藩の会合へお供として行く事が増えました。
勿論、中に入って参加することはなく事が終わるまで通された部屋で待っているのですが、
権力・金子・駆け引き・相手の腹の探りあい等、なかなか表立ってはできないような話をしているときもあるようです。
そういう話をした時は、帰って来た副長の機嫌がものすごく悪いので、すぐ分かります。
本当のところ、副長がそういうことに係っているのかは知りませんが、いずれにしろ副長の気分が良いはずはありませんから、
私は知らぬふりをします。
気付いても知らぬふりをする。
そういうことが副長の傍にいると何かと多くなりました。
隊士の処罰・監察方への極秘裏の指示・・・・・・。
何が行われようとしているのかを大体を知りつつも、私はそれに知らぬふりをする。
そこには、一番隊にいた頃とは異なる緊張感がありました。
黒谷で会合が終わったのは、もう夕暮れ時でした。
副長の表情をそっと伺うと、いつもどおりだったので、ほっとしました。
帰り、それは見事な桜並木を通りました。
行きと一緒の道ですが、昼間は色々考え事をしていたので、見逃していたようです。
夕日に照らされる桜も趣深いものでした。
副長も歩を緩め、見入っているようです。
「寄り道していくか」
そう言うと、並木道の途中にある団子屋に副長は入っていきました。
店先にある腰掛に座ると、副長はお団子を二つ注文しました。
驚いて副長をみると、「おごってやる」と目がいっています。
御礼を言うと、副長は桜の方に視線を移しました。
風が吹くたびに散る花びらが夕日に照らされて、夜桜ならぬ夕桜もなかなかだと思いました。
ふと隣を見ると、副長が真剣な顔で、じっと散る桜を見ていました。
まるで、桜に自分を重ねているようでした。
本当は黒谷で何かあったのでしょうか。
夕日に染まった副長の顔は真剣そうでもあり、そしてそれは少し切なそうにも見えました。
私は気になりながらも気付いていないふりをして、お団子を口に入れました。
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