泳ぐ視線








「よう、少しはいい子にしてるか」









いつものニヤリ顔をしてあなたは部屋にやってくる。



「鬼に監視されては、流石の私も逃げられませんからね」



私もいつもの笑顔一つ。



まるで私にあてつけるように神谷さんとの仲を見せ付ける貴方。



そんな貴方からは逃げられませんとも。えぇ、逃げません。



「そんなお前の顔、久方ぶりにみたなぁ」



「え?」



「ほら、昔。近藤さんを俺にとられまいとしていた頃のお前にそっくりさ」



なぁ、宗次郎と笑いながら言われてもですね。



私はどう答えたらいいんですか?



「近藤先生は素直すぎるお人です。先生の前では、悪も善になる」



「それは俺のことか?」



「さぁて、御自覚があるのなら、そうじゃないですか?」



「・・・・・お前、俺には手厳しいよな、昔っから」



胡坐を組みなおす貴方。あぁ、少し苛立っていますね、その様子は。







「嫉妬ですよ」





ふふ、貴方のそういう驚いた顔、私好きだなぁ。何だか少し勝ったようで。





「貴方は昔から私が大好きなものを横からとってゆくんだもの」



「・・・・・・それは近藤さんのことか?」



「それ以外に何があるというのです」



あぁ。また。貴方ってこういうとき、少し目が泳ぐんですよね。



「近藤さんは、お前のことを随分と買っていると思うけどなぁ、俺は」



「いまさら、おべっかですか。貴方らしくもない」



「事実だろうが。近藤家の跡取りもお前に継がせたいとうるせぇほど言っていたぜ」



「それは、土方さんには無理でしょう。一つしか違わない息子だなんて近藤先生もお嫌でしょうし、何よりあの剣術では」



「そりゃぁ、聞き捨てならねぇなぁ」



「土方さん、ご自分で自覚しているでしょ?形に合っている様で合っていない自己中心的な剣筋。目録だって、あれは近藤先生のお情けですよ」



「へぇ、へぇ、免許皆伝様」



少しの沈黙の間。



「さて、ここにいても免許皆伝様に苛められるだけだから、仕事に戻るとするか」



「何をいうんです。鬼に苛められているのはこちらだというのに」



「随分な言いがかりだ」



「この部屋に閉じ込めて」



「ここは風通しもよく、庭に咲き誇る花もよく見える。いい場所じゃねぇか」



「庭に咲き誇る花ねぇ・・・・・・。私はいつも違う『花』を貴方にみせられているような気がしてならないのですが」



「ほう。どんな『花』だ」



「貴方の目には決して見ることのできぬ『花』ですから、教えてあげません」



貴方は面白そうに私を見て、障子に手をかけた。



口げんかでは貴方にどうせ叶いませんから。



でも、私は逃げませんよ。今度ばかりは。





「総司、言っとくが。この部屋がよいと俺に進言したのは、あいつだぜ」



まるで今思い出したかのようにいい、障子を開けた貴方の向こうにみえたのは。



向かいにみえる部屋で掃除をしている神谷さんの姿。



今度は、私の目が泳ぐ番だった。








内容は「爪噛み」とつながっています。

こういう二人の感じも好きだったりします(*^^)