ただ懐かしき







一人、また一人と散ってとうとう二人。
想い出を語るにはまだ早すぎるけれど、それでもふいに蘇るあの頃。
生まれ育った江戸にも皆に出会えた京にも、もう二度と足を踏み入れられない。
官軍に追われ追われて、辿り着いたのは北の大地。

雪深く、寒く、厳しいこの土地は、過去の栄光ばかり思い出してしまう頭を冷やすのに丁度良い。



もうあの頃には戻れない。
もうあの日には戻れない。



分かっている。
分かっている。
分かっているのに・・・・・・・。


落つる涙は止まらない。


初めて男達の心熱さを知った。
初めて男達の生き様を知った。
初めて男達の格好良さを知った。
初めて男達の優しさを知った。


死んでゆく者よりも残される者の方が辛い事を知った。
どんなに足掻いても逆らえぬ流れがある事を知った。
ただ勝つことだけが、戦の義ではない事を知った。


隣で眠る人は随分と痩せたように思う。
自分を責めて責めて責め続けて、けれどそんな自分を表には出さない。
初めてこんなに不器用で意地っ張りな男がいるのだと知った。
初めて一生ついてゆきたいと思わされる男がいるのだと知った。


ごろりと寝返りをうち、こちらを向いたあの人は、 幸せそうに笑んだ。
どんな夢を見ているのだろう。



あの笑い声が懐かしい。
あの肩を組んだ日が懐かしい。
あの皆の笑顔が懐かしい。


あの日に帰れないのであれば、
せめて、
せめて、
夢の中だけでもあの日に戻りたい。







懐かしいと思うのはその想い出が自分にとってとても良かったものだからだと思います。

前を向いて歩いていても、ちょっと後ろを振り返ってしまう。

死を覚悟していても、ふいに引かれる後ろ髪。

そんな感じで書いてみました(^^ゞ