爪を噛むという行為は、少なくとも子供の頃にはなかったように思う。
よく泣いて二人の姉を困らせたことはあっても。
無意識のうちに噛みすぎていびつな形の爪。
神谷さんを見ているときに爪を噛んでいることが多い。
否、違う。
神谷さんと土方さんを見ているときに多い。
喧嘩していると思ったら、笑いあって。
照れあっていると思ったら、また言い合って。
この部屋からは、副長室がよく見える。
なかなか風邪が治らず微熱が続く私が土方さんの目を盗んで遊びに行くからとあてがわれたこの部屋。
たしかに副長室からこの部屋はよく見える。
でも、逆も然り。
ここからは土方さんと神谷さんがよく見える。
ああ、また神谷さんをからかって。
土方さんも飽きない人だ。
神谷さんをからかうことがそんなに面白いのでしょうか。
たしかにすぐむきになるきらいはあるけれど、あそこまでいつもからかわれては神谷さんもかわいそうだ。
・・・・・・。
ふと、土方さんがこちらをみたような気がした。
・・・・・・からかわれているのは、私のほうですか？土方さん。
また、爪を噛んでしまった。
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