「なかなか強情な娘さんだ。だが、女には女のはかせかたというのがある。じゃじゃ馬っていうのも悪くはねぇな。」 男は、口を吸い上げる。 ガリッ! 唇を噛んだセイの反抗に男はバシっと頬をたたいた。 セイの白い頬がしだいに朱に染まってゆく。 「気の強いのは大いに結構。だがな、あきらめも肝心という言葉を忠告するぜ。」 男は再度急所を狙われないようセイの両足の中に自分の両足を入れ、首筋に舌をはわす。 身を捩らす事を試みるが、後ろの男に手を掴まれているためどうにもならない。 「俺からも忠告しとこう。あがけばあがく程、男はその気になるものだ。」 後ろからクッという笑いとともに声が聞こえてくる。 ・ ・・セイはこの時不思議にも,女としての怖さは感じられなかった。 あるのは、山崎からもらった紙包みを男達に盗られぬようにせねばという思いただ一つ。 紙包みを入れた財布は懐ではなく、帯と着物との間にいれてある。スリに合っても盗られぬようにと工夫したのだ。 しかし、このままでは時間の問題である。 男達に反抗した時点で、自分が山崎と何らかの関わりを持っているということを露呈したようなものだ。 何か・・・何か・・・良い策は!!どうしたらいい!どうすればよい!! 目を閉じ必死に頭を回すセイの耳に聞きなれた声が入ってきた。 「なら、俺からは、女子はもっと丁重に扱うべきだと忠告するぜ。」 ━「残り香」(後編)より━
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