残り香(四)






このまま真っ直ぐ道を歩くと思われた二人が、急に角を曲がり姿を消したことに慌てたのは長人達である。

見逃してたまるかと急ぎ後を追いかける彼等に、立ちはだかる人影。



「新撰組二番隊組長、永倉新八!」



まさか、ここに待ち伏せられているとは思わなかった長人達は、目を見開き急ぎ鯉口を切る。

一部は、活路を見出そうと反対側へ移行する・・・が、それは適わなかった。



「新撰組一番隊組長,沖田総司!」



周りを新撰組に取り囲まれ、逃げ場を失った長人達はがむしゃらに剣を繰り出す。

「生け捕りって斬り殺すことより存外難しいものなんですね。改めて実感しました。」

「違いねぇ。」

笑いながら余裕のやり取りをする総司と新八。

勝負はついたようなものだった。






━「残り香」(後編)より━